双極性感情障害|代表的な病気

Ⅰ型とⅡ型(重症と軽症)

うつ状態だけが起こる気分障害を「うつ病」といいますが、躁状態も現れ、これらをくりかえす病気が双極性感情障害です。誰でもわかる激しい躁状態が起こる場合は「双極性感情障害Ⅰ型」、軽度の躁状態の場合を「双極性感情障害Ⅱ型」といいます。

この「Ⅱ型」と「うつ病」との鑑別が重要なことは、うつ病のところで述べた通りです。Ⅱ型では、軽躁状態に入ると、いつもに比べて積極的になり、「少しハイだな」と感じますが、周囲に迷惑をかける程ではないので、見逃しやすいのです。ふだんより体調もよく、仕事も捗るので、本人も「調子良くなった」と感じます。しかし軽躁状態に入ると、その後、必ず落ちます。この「ハイ」な状態を認識し、「そこに入らない」ようコントロールすることが、治療の要となります。

治療と経過

双極性障害には、気分調整薬と呼ばれる薬が有効です。リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンなどを用います。うつ状態があれば、ここに抗うつ薬を併用します。

初発の場合、薬を用いれば、軽躁状態とうつ状態から脱することは、比較的容易です。問題は、その後です。これらの病相が治ったからといって、そこで治療をやめてしまうと、ほぼ確実に(うつ病よりも高頻度に)、再発します。そのため長期にわたる再発予防療法が必要となるのですが、患者さんは、どうしても軽躁的な気分を好むため、気分調整薬の服用継続を躊躇うのです。気分が回復してくると、「自分で決めたい」気持ちが強まり、「薬から離れたい」と思うようになります。
躁でもうつでもない、一見、「病気が治った」ような状態になっても、まだ「薬を飲む」というのは、簡単なことではありません。しかしやはり「薬を飲む」ことは必要だと言われています。

再発を繰り返すと、どうなるでしょう?
躁とうつを何度も繰り返すうち、病相の間隔(健康な期間)はだんだん短くなっていきます。しまいには急速交代型(年間に4回以上の病相があること)へと移行することもあります。また薬も効きにくくなり、大量の薬が必要となります。さらに、人間関係が壊れてゆき離婚、失職したり、社会的信用、家庭など多くのものを失う危険があります。双極性感情障害が「パーソナリティ障害」と間違われやすいのは、このためです。
そうならないためにも、早い段階で(いろいろなものを失う前に)、気分をコントロールし、治療を軌道にのせることが大事なのです。

患者さんご自身ができること

見過ごされやすく、しかし非常に重要なのが「規則正しい生活リズム」です。気分の変調は、脳のリズムの乱れと関係しています。生活リズムを一定にすることで、脳のリズムを安定化させる助けになるようです。できる限り、1日のスケジュールを一定にすると良いでしょう。夜更しを避け、日中は散歩などの軽い運動をして、しっかり日光を浴びる、外気に触れて、五感をバランスよく刺激しましょう!アルコールは脳のリズムを乱すため、控える方が安全です。

躁うつ系の方は、性格的に、無理をしてでも高い目標をめざし、人に制約されない「自由な生活をしたい」、「生きている手ごたえがほしい」と考える方が多いようです。治療薬の定期服用、生活管理などは、患者さんにとって、「本来の自分とは違う…」と感じ、心理的な抵抗感がでてきます。私の経験では、このような抵抗感と取り組むことが、治療のターニングポイントとなることが多いようです。
治療を受けることについて、気持をふりかえることも重要です。率直に話し合いながら、再発予防を軌道に乗せてゆきましょう!